ナブッコ、G. ヴェルディ
どの作曲家にも、そのキャリアの転機となるような作品があるものです。ジュゼッペ・ヴェルディにとって「ナブッコ」はまさにそういう作品でした。旧約聖書を題材にしたこの叙事詩的な大作は、ヴェルディならではのドラマチックなオーケストレーションと魅力的なメロディーで、彼をイタリアオペラ界の巨匠のひとりに押し上げたのでした。1842年3月9日、ミラノ・スカラ座で「Nabucodonosor」という原題で行われた初演は、歓喜を持って迎えられ、ヴェルディの才能と技量を十分に証明してみせました。史跡アレーナ・ディ・ヴェローナで公演される「ナブッコ」は一層魅力的で印象的。バビロニアの王とユダヤ人奴隷の試練がリアルに描かれ、感動を呼び起こすことでしょう。「ナブッコ」のチケットには、公演当日またはその前日か翌日にご利用可能な観光ツアーが含まれており、ヴェローナでの滞在を最大限に楽しむことができます。ミニ列車に乗り込み、「愛の町」の美しい眺めを堪能してください。音楽、ドラマ、歴史、そして美がひとつになりました。
「ナブッコ」というタイトルは、エルサレムを征服し、ユダヤ人を奴隷にしたバビロニアのネブカドネザル王の名前に由来しています。ストーリーは、旧約聖書のいくつかの人物伝をもとにしており、脚本家のテミストークレ・ソレーラは、19世紀のいくつかの作品、特にオーギュスト・アニセ=ブルジョワとフランシス・コルヌによる戯曲、アントニオ・コルテージによるそのバレエ化からも、重要なインスピレーションを受けてこれを書きました。ヴェルディが何度も効果的に使っている手法ですが、ソレーラは、歴史的、政治的なプロットと優しい愛の物語を巧みに組み合わせています。舞台は、バビロニア軍によるエルサレム包囲が間近に迫っている場面から始まります。ユダヤ人の大祭司ザッカリアは、バビロニア王ナブッコの娘フェネーナを人質にしているため、まだ平和が訪れるだろうと思っています。ザッカリアの甥イズマエーレは、彼女の護衛を任されていますが、フェネーナとイズマエーレは、誰も知らないうちに恋人同士になっていました。ナブッコの長女アビガイッレは、二人の関係を知って、二人を別れさせイズマエーレを自分のものにしようと画策します。嫉妬、宗教、政治権力、親子の愛、恋愛感情が究極の試練に挑みます。
ヴェルディの「ナブッコ」の音楽は、オペラのストーリーと同様、力強くインパクトがあります。中でもヘブライ人奴隷の合唱「行け、我が想いよ Va, pensiero, sull'ali dorate」は、最も有名な曲で、公演では伝統的にアンコールとして演奏されます。1901年にヴェルディが亡くなったとき、彼の葬列に集まった多くの会葬者もこの曲を自然に口ずさみました。「ナブッコ」という素晴らしい音楽と物語のほかに、ヴェローナの旧市街観光というもうひとつの楽しみもあります。オペラのチケットにはツアーが含まれており、ローマ時代の城門、カステルベッキオ城とサン・ピエトロ城、ヴェローナ大聖堂、サンタナスタシア教会、ルルドの聖母教会、アディジェ川の川岸など、主な見所をtrenino(ミニ列車)で25分かけて巡ることができます。出発は30分おきで、「愛の町」の魅力を余すところなく伝えてくれます。