ピーター・グライムズ、B.ブリテンによるオペラ

イギリスの新古典主義の作曲家ベンジャミン・ブリテンは、オペラの世界ではあまり知られているとは言えませんが、それでもこの「ピーター・グライムズ」は彼にとっての最初の大ヒットしたオペラとなりました。3幕もので、1945年6月7日、ロンドンのサドラーズウェルズ劇場で初演されました。瞬く間に好評を博し、現在も定期的に再演されています。今シーズン、ヴェネツィアのフェニーチェ大劇場では、原作に忠実に英国の陰湿な雰囲気をたっぷりとお楽しみいただく「ピーター・グライムズ」を公演します。ベンジャミン・ブリテンの際立ったコーラスとパンチのきいたソロが織り成す、暗い漁村を舞台にした疑念と死と孤独の世界にひたってみてはいかがでしょうか。
「ピーター・グライムズ」はジョージ・クラッブの「町」という詩集の中の一節「ピーター・グライムズ」にもとづいています。クラッブはその中で、イギリスの海岸沿いの小さな町の特異性やそれに対する不満を表現しています。この架空の漁師の町は、クラッブやブリテンが住んでいたアルビオン島東海岸のアルデバーグと似ており、二人とも実体験を作品に反映させたとも言えましょう。モンタギュー・スレイターがこの詩を脚色し、ブリテンはこの陰鬱な物語を象徴する音楽をつけました。現代の視点から見ると、このオペラは、ブリテンの時代のイギリスの同性愛者たちの難しい立場、直面する数々の偏見を強力なメタファーで表し、彼らのつらさを反映した作品となっています。
悲劇のヒーロー、ピーター・グライムズは、貧しい漁師でありながら、町の上流社会に溶け込もうと努力しています。愛するエレンにプロポーズするため、必要なお金を得て、周囲から一目置かれる存在になろうとしていますが、運命はいたずら。オペラの冒頭で、彼は徒弟の海難事故の審問を受けています。検視官が少年の死は不幸な事故であると証言しても、町の人々はピーター・グライムズが少年を殺したと確信しています。町の人々がピーターに反感を募らせる中、ピーターは幻滅、破壊、そして死のスパイラルに陥っていきます。今シーズン、ブリテンのこの感動的なオペラがフェニーチェ大劇場で公演されます。