ウェスト・サイド・ストーリー、L.バーンスタイン

ローマで開催されるカラカラ音楽祭のハイライトのひとつは、レナード・バーンスタインの大ヒット作「ウェスト・サイド・ストーリー」。このミュージカルは、ローマ歌劇場のバレエ団およびオーケストラによって、有名な古代ローマ遺跡、カラカラ浴場にて上演されます。バーンスタインと、当時、彼と共に活動していた振付師ジェローム・ロビンスは、ウィリアム・シェイクスピアの「ロミオとジュリエット」をミュージカル化する計画を、1949年にはすでに立てていました。しかし、実際の初演は、アメリカの首都ワシントンD.C.で、1957年8月19日に行われました。
「ウェスト・サイド・ストーリー」は、シェイクスピアの原作の対立する家同士を、ニューヨーク市を舞台に、ストリートギャングとして再構築しています。当初の構想では、ニューヨークに存在する異なる宗教コミュニティ間の対立を用いて、主人公たちが感じる愛への葛藤を描く予定でした。しかしこのアイデアには手が加えられ、最終的には異なる民族的背景を持つ2つのギャングが、マンハッタンの一角を自分たちの縄張りと主張し合い、対立するという設定になりました。この方向転換は、劇作家アーサー・ローレンツがプロジェクトに参加した後になされました。彼とバーンスタインが、この大胆な変更を加えるという決断を下したのです。当時のマンハッタン西側地区で実際に起きていた縄張り争いを反映する形となり、ミュージカルは瞬く間に観客の共感を呼びました。その後、この作品はブロードウェイで上演されることになり、1957年9月26日、ウィンター・ガーデン劇場でニューヨーク初演が行われました。公演は732回にわたって続き、やがて全米を巡る人気ツアー公演へと発展していきました。
歌詞は、スティーヴン・ソンドハイムが手がけており、この作品は彼の初期の成功作の一つとされています。歌詞は、ミュージカル全体に高揚感をもたらす場面を演出する一方、鋭さや陰りも持ち合わせており、バーンスタインの編曲がその複雑な感情を際立たせています。たとえば、マリアとトニーが愛を誓い合うデュエット曲「トゥナイト」では、2人のロマンチックな想いが歌われる背後で、より暗い出来事が進行しています。ちょうどロミオとジュリエットのように、マリアとトニーもまた、自分たちを取り巻く状況、引き裂かれる忠誠心、そして所属するコミュニティによって、運命から逃れられない様子が描かれています。
ギャングの一団によって演じられるアンサンブル曲「アメリカ」は、作品の中でも特に印象的な場面です。ニューヨークにやって来た移民たちが、アメリカでの生活のいい点と欠点について、交錯する感情を語り合います。夢中になると同時に、斜にかまえた気持ちも込め、複雑なヒスパニック系のリズムが取り入れられており、振付においても見応えのある場面が展開されます。今回のカラカラ浴場公演で、今なお、観客を魅了し、驚かせ、楽しませる力が少しも衰えていない「ウェスト・サイド・ストーリー」をお楽しみください。