蝶々夫人、G.プッチーニ

「Un bel di vedremo ある晴れた日」 ― “ある晴れた日に、彼は戻ってくるでしょう”。 ジャコモ・プッチーニの「蝶々夫人」の中の、蝶々さんのこの素晴らしいソロほど、切なく、心の底から悲しみを歌い上げたアリアは、オペラの中にほとんどありません。グランドピアノの伴奏で6人の歌手がフィレンツェの聖マルコ聖公会教会でお送りするこのオペラは、こじんまりとしたアレンジで、舞台上での出来事が本当に近く感じられ、登場人物の強い感情をじかに経験していただく機会となるでしょう。プッチーニの最も成熟したオペラの一つを心ゆくまで味わっていただくのに、これ以上のセッティングはありません。
アメリカの海軍将校の日本人現地妻、蝶々さんとプッチーニの恋愛は、ロンドンで始まりました。プッチーニは英語に堪能ではありませんでしたが、デーヴィッド・べラスコの戯曲「マダム・バタフライ」を観劇し、すぐにヒロインの激しい感情の動きに魅了されました。そして、即座に制作を開始、台本作家のルイジ・イッリカとジュゼッペ・ジャコーザの助けを借りて、深いドラマ性と、音楽に溶け込んだ日本、アメリカ、イタリアの影響で、聴く者を魅了し続けるみごとなオペラを作曲しました。
原題「マダマ・バタフライ」は、悲劇の主人公の名前から来ており( 「バタフライ」は 英語で蝶々のことです)、若い日本人女性とアメリカ海軍中尉ピンカートンとの悲しい結婚の物語です。蝶々さんは真剣にピンカートンを愛しますが、彼にとって、彼女はコレクションの中のかわいい1羽の蝶、エキゾチックな冒険をしているにすぎません。間もなく、ピンカートンはアメリカに帰国し、彼の子供を身ごもっている蝶々さんは、ひたすら彼の帰りを待ちます。3年後、ピンカートンが帰ってきましたが、彼らの再会は、無垢な蝶々さんが想像していたよりもはるかに悲しいものでした。
プッチーニは、愛、孤独、希望、裏切り、植民地主義といったテーマを扱う多層の芸術作品を制作しました。 聖マルコ教会でのシンプルなアレンジでの「蝶々夫人」では、プッチーニのドラマと音楽の才能を純粋な形で味わっていただくことができます。極東への旅をどうぞお楽しみください!